かぶきのおはなし  
  20.江島生島事件  
 

正徳4年(1714)1月に起きた、歌舞伎役者と大奥女中とのスキャンダルです。 役者の名は、生島新五郎(いくしましんごろう)。事件の当時の年齢は40歳を少し超えたばかり。役者としても人間としても、最も脂の乗った分別盛りです。
主な役どころは「濡れ事」、「やつし」で、美貌の二枚目であるのみか、演技にも長じていたといわれています。江戸は木挽町・山村座の専属俳優で、当時たいへんな人気役者だったということです。(自分の目で見た訳ではないのですが、この事件を題材にした劇の多くが、そういう設定になっています。)

江島生島事件
 
 
一方の当事者は、時の権力の中枢、江戸城大奥の女中、大年寄江島(えじま)。 江島というのは、7代将軍家継の生母・月光院つきの大年寄です。そして、 こちらもたいへんな美女であると、芝居の方では大概そうなっていますが、本当のところはお目にかかってみないことには分かりません。

さてどんな事件かというと、大奥の女中江島が芝増上寺代参の帰途、上野寛永寺代参の同役宮路と共に、女中衆を引き連れて、木挽町・山村座で遊興、帰城に遅れたという。さらに、歌舞伎役者生島新五郎と馴染みとなり、情を通 じたというものです。
世にいう不倫です。たかがこの程度のことで、権力の中枢にいる江戸城大奥の大年寄江島、神奈川県警ですら簡単に出来た事件の揉み消しが、何故出来なかったのか不思議でなりませんが、そこは陰謀渦巻く?大奥のことです。権勢争いの確執(かくしつ)でもあったのか、詳しくは知りません。

とにかく幕府身内の不祥事として、江島は信州高遠(たかとお)に流罪になり、あわれ生島新五郎は三宅島に島流しに遭いました。そして同時に、千人を超す関係者が、処分の対象となったのだから驚きです。 山村座は、廃絶になりました。いまなら免許取消し処分です。この事件以降、江戸三座となったのです。
 
   
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