かぶきの家系  
  かぶきの家系  
 
 

市川団十郎家

  歌舞伎界最高の名跡。江戸歌舞伎のボス的存在で特に市川宗家(そうけ)と呼ばれる。荒事芸を創始した初世、「助六由縁江戸桜」を初演した2世、「勧進帳」を初演すると共に"歌舞伎十八番"を制定した7世、最高の人気役者でありながら大阪で謎の自殺を遂げた8世、明治の名優で役者の社会的地位向上を目指した9世、"海老さま"と呼ばれ天性の美貌で多くの女性ファンを魅了した11世など代々名優を輩出している。本姓は堀越で、先祖は甲州市川郷の出だという説もあるが定かではない。成田家、定紋は三升(みます)。
  松本幸四郎家
  もともとは市川団十郎家の弟子筋にあたる。市川団十郎家に子が無い場合に、当家から養子を迎えた。4世、5世、11世の団十郎も当家の出身である。"鼻高幸四郎"と呼ばれ実悪を得意とした5世、生涯に「勧進帳」の"弁慶"を1600回以上も勤めたという7世、一時期菊田一夫に招かれ山田五十鈴・山本富士子らの女優と一座を組んでいた8世などの名優を生んだ。 高麗屋、定紋は四つ花菱。
  中村歌六家
  大阪に生まれ3世中村歌右衛門の門弟だった初世を祖とする家系。大正・昭和の名優と謳われた初世中村吉右衛門や17世中村勘三郎(現中村勘九郎の実父)は3世中村歌六の子。映画などで活躍の萬屋錦之助・中村嘉葎雄兄弟もこの家系の出。現4世中村歌六は市川猿之助劇団で活躍中。 萬屋、定紋は桐蝶(かたばみ)。
  中村歌右衛門家
  金沢の医者の出だといわれ大阪で活躍した初世から4世までは立役を得意としたが、5世以降は女形の代名詞のような名優ばかりである。先日亡くなった6世は戦後歌舞伎を象徴する女形の名優であり長らく日本俳優協会会長を勤めた。4世を境に江戸に出た中村歌右衛門家と大阪に残った中村鴈治郎家に分かれる。"近松座"を主催する現3世中村鴈治郎は上方の名優坂田藤十郎の名跡を200年振りに継ぐことが先日発表された。 成駒屋、定紋は祇園守(中村歌右衛門)、イ菱(中村鴈治郎)。
  尾上菊五郎家
  市川宗家と共に250年以上の歴史を誇る名門である。最も有名なのは9世市川団十郎と共に明治の歌舞伎界を代表し"散切りもの"といわれるジャンルを拓いた5世、現代歌舞伎の基礎を築いたといわれ"世話物"に新境地を拓いた6世である。また現7世は女形から立役まで幅広い芸域を持つ。 音羽屋、定紋は重ね扇に抱き柏。
  市川段四郎家
  スーパー歌舞伎で有名な現3世市川猿之助の家系。早変り、宙乗りなどのケレンを得意とする。家長名である市川段四郎は実弟が継いだ(4世)。 沢瀉屋(おもだかや)、定紋は三つ猿。
  坂東三津五郎家
  5世坂東八十助は本年正月10世坂東三津五郎を襲名したばかり。人気の女形・現5世坂東玉三郎もこの家系(養子)。 屋号は代々大和屋、定紋は三ツ大(坂東三津五郎)、花かつみ(坂東玉三郎)。
  片岡仁左衛門家
  京都を本拠とする歌舞伎界の名門。ただし3世、5世、6世は片岡仁左衛門を名乗っていない。現15世はその美貌と口跡の良さから当代の人気俳優で前名の片岡孝夫時代から坂東玉三郎とのいわゆる"孝玉"コンビで鳴らした。 松島屋、定紋は七つ割り丸に二引き。
  沢村宗十郎家
  元禄時代から続く歌舞伎界の名門。幕末の天才的な女形、脱疽のため手足を切断されながらも舞台に立ち、最後は発狂して死んだという3世沢村田之助はこの家系の出である。昨年9世沢村宗十郎が亡くなった。 紀伊国屋、定紋は丸にいの字。