かぶきのおはなし  
  164.江戸時代のお金  
 
よくお芝居を見ていると、小判だとか、一分銀だとか、あるいは寛永通宝だとか色々な種類のお金が出てきて、何となくお金だということは分かるのですが、実はよくは分からないというのが(私も含めて)本当のところではないでしょうか。そこで、ものの本で調べてまとめてみましたが、これがなかなか複雑で、また時代と共に少しずつ違っているので、正確ではないかも知れませんが、概略は以下の通りです。ご参考にして下さい。

 
 
まず江戸時代に通用した貨幣は、「金貨」、「銀貨」、「銭貨」の3種類あって、これを「三貨」というのですが、やっかいなことにこの「三貨」の単位が皆それぞれに違うのです。


江戸時代のお金
 
  (1) 金貨(基本単位=両)
基本単位である「両」の下に「分(ぶ)」と「朱(しゅ)」がありますが、これが4進法で、1両=4分=16朱となります。
金貨の種類としては、「大判」(10両)、「小判」(1両)、「二分金」、「一分金」、「二朱金」、「一朱金」の6種類です。

(2) 銀貨
(基本単位=匁) 基本単位は「匁(もんめ)」ですが、「匁」というのは重さの単位で1匁=3.75gです。「匁」の上に「貫」、「匁」の下に「分(ふん)」、「厘(りん)」があり、1貫匁=1000匁、1匁=10分=100厘となります。

銀貨の種類としては「丁銀(ちょうぎん)」や「小玉銀」などがあるのですが、ここで注意しなければならないのは、江戸時代の中期頃(1700年代の中頃)迄は、その銀貨の価値は秤(はかり)にかけて重さで決めていたということです。

銀貨は使用の都度、重さを計る訳で、これを秤量貨幣(ひょうりょうかへい)と言います。(これに対して金貨と銭貨は、計数貨幣といいます。)これは、銀貨の種類によって重さが一定ではなかったということでもあります。

ところがこれではあまりに不便だというので、1700年代後半頃から、銀貨の価値も貨幣に表示するようになり、「明和五匁銀」、「南鐐二朱銀(なんりょうにしゅぎん)」、「一分銀」、「二朱銀」、「一朱銀」などが出来ました。
(この「分」「朱」は、4進法です)

(3) 銭貨(基本単位=文)
基本単位は「文」ですが、「文」の上に「貫」があり、1貫=1000文となります。銭貨の種類ですが、江戸の初期ではもっぱら中国(明)からの輸入銭である「永楽銭」(1文)が使用されていたようですが、「寛永通宝」(1文と4文があります、銅銭です)が作られてからはこれに統一されたということです。江戸中期以降には、真鍮製の「四文銭」(4文)や「天保通宝」(100文)なども流通したということです。

ここまでが、江戸幕府公認の正式な通貨で、すべて貨幣です。日本全国に通用します。紙幣はありません。そして貨幣の鋳造権は当然ながら幕府のみにありました。ところが江戸も中期以降になり大名の財政も逼迫してくると、その領地内のみで通用する「藩札(はんさつ)」という紙幣が登場しました。悪くいえば、借用証文代わりの紙幣で金本位制とはいわないでも、何らの返済財源の裏付けが無ければ紙切れ同然の代物です。

それから、芝居などでよく贈答用の表示として「金1000匹」とか、「銀100枚」とか出てきます。これには決まりがあって1両=金400匹ですから、「金1000匹」とは金2両2分のことです。また、銀1枚=銀43匁に相当します。

「金貨」、「銀貨」、「銭貨」の「三貨」が貨幣として流通した江戸時代ですが、実際に長屋の熊さんや八っつあんが手にしたのは、せいぜい「銀貨」まででしょう。次回は、この「三貨」の交換レートのお話をします。

 
   
back おはなしメニュー next