かぶきのおはなし  
  130.三段  
 
歌舞伎の道具に「三段(さんだん)」というものがあります。道具というより三段になった階段状の台といったほうが当たっているかも知れません。

主として舞踊劇や時代物狂言で使われることが多いのですが、幕切れ(終わりの場面のことです)に、舞台中央にこの「三段」を持ち出し、座頭級(大幹部クラス)の役者がこの「三段」の上に乗って見得を切る為のものです。

 
 
三段 真っ赤な緋毛氈で包まれたこの「三段」は、幕切れの見得をより一層絵画的に美しく見せる為の、演出上の工夫だと思います。あるいは、役者の貫禄を示すものかも知れません。通常、幕切れに後見がふたりがかりで舞台中央に据えて、そこに役者が乗って見得となり、暫くして析がチョンと入って幕(終わり)となる訳です。

この「三段」ですが、江戸時代にはその使用は座頭(一座のボス)か立女形に限られたそうですが、今ではその狂言の主役であれば使って構わないようです。ただ、女形が使用する場合は、「三段」ではなく「二段」と決まっているそうです。女形も男なので、男尊女卑でもないのでしょうが、何故かそういうことになっているのです。
 
  この「三段」を幕切れに使うお芝居は、結構沢山あります。「積恋雪関扉」では、桜の枝を持った"小町桜の精"がこの「三段」に乗って(正確には、小町は女だから二段です)、大伴黒主との見得になって決まります。

 
   
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