かぶきのおはなし  
  123.位星  
 

よくお宮参りや七五三の時などに、ちっちゃな可愛い男の子が顔にお化粧をしているのをよく見かけます。そしてよくよく顔を見ると、眉の上あたりに薄墨色で円くもう一つ眉のようなものを描いていることが分かります。お稚児ルックとでも言うような感じのお化粧です。

歌舞伎にもこれと同様の化粧法があります。「位星(くらいほし)」と呼んでいますが、ただ歌舞伎では稚児よりもどちらかと言えば、身分の高い人、公卿などの貴族の化粧法として用いられているようです。

位星
 
  眉の上にもう一つの円い眉が乗っているようで、まことに不思議な化粧法ですが、でもこの「位星」を描くと、本当に高い身分の人のように見えるから不思議です。いかにも麿(まろ)と言った感じが出て来ます。

また歌舞伎では、善悪共にこの「位星」を付けた人物が登場するので、善悪には関係のない化粧法だということが分かります。「位星」のその名の通り身分(=位)の高いこと(=星)を象徴しているだけのような気がします。

この「位星」をつけた善人の代表としては「鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき)」の"一条大蔵卿(いちじょうおおくらきょう)"が挙げられます。

そして悪人の代表が「積恋雪関扉」の"大伴黒主"です。

 
   
back おはなしメニュー next