かぶきのおはなし  
  112.外題の文字数  
 
歌舞伎界というより興行界は、とても縁起を担ぐ世界のようです。この世界では、忌み言葉というのがあって、その最たるものが「する」という言葉です。要するに、芝居興行が不振で損をするという意味ですが、これを嫌う余り「すりばち」を「あたりばち」と言い換えたりする訳です。「するめ」を「あたりめ」というのも同じです。「あたり」は言うまでもなく大当たりです。

 
 
歌舞伎の演目のことを外題(げだい)というのですが、この外題の文字数は、7か5が多く、いずれも奇数です。江戸時代も後半頃からとくにこの傾向は顕著となっていったようですが、偶数だと2つに割れるから縁起が悪いというのです。この結果、無理矢理文字を捻(ひね)って奇数にするので読む方が苦労をさせられる例がいくつもあります。

外題の文字数
 
  例えば「本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)」。古代中国の24人の親孝行者に因んで付けた名前ですが、「本朝二十四孝」とすると6文字になって具合が悪いので「本朝廿四孝」とするのです。

あの夕霧・伊左衛門で名高い「廓文章(くるわぶんしょう)」も、最初は「曲輪文章(くるわぶんしょう)」だったそうです。4文字で縁起が悪いので「曲輪」を「廓」に変えたということだそうです。

あるいは「極付幡随長兵衛(きわめつけばんずいちょうべえ)」という外題のお芝居があります。言うまでもなく江戸の町奴(まちやっこ)の代表、幡随院長兵衛を主人公とした芝居です。ところが主人公の名前をそのまま外題に据えると、6文字になって具合が悪いのです。それで「院」をとって頭に「極付」をつけるという、まさに極め付けのことをいとも簡単にやってのけるのです。

 
   
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