かぶきのおはなし  
  97.四天  
 

「四天」と書いて「よてん」と読みます。「してん」と読むのは、何故か御法度だそうです。

「四天」というのは、歌舞伎の衣装用語です。裾の脇の左右が割れている(スリットが入っている)着物のことで普通は裾を短くして着ます。黄檗宗(おうばくしゅう)の僧が着用する短い僧衣で、袖は広く裾が4つに裂けたように仕立てたものを「四天」と言うのだそうですが、これからとった言葉だという説が有力ですが定かではありません。

四天
 
  この「四天」も実は沢山の種類があります。最も典型的なのが「伊達四天(だてよてん)」です。座頭役者が演じる「大百(だいびゃく)」という壮大な鬘(百日間も月代が剃ってなくて頭全体に毛が伸び伸びになった様を誇張したもの)をつけた大盗賊の役どころが着る衣装で、金糸や銀糸で縫ってある裾の割れた派手なものです。裾まわりには、「馬簾(ばれん)」と呼ばれる房がついていて、更には下には素網(すあみ)を着込んでいるというものです。妖術使いや御注進役などもこの「伊達四天」を着ています。

もう一つ多いのは、「花四天(はなよてん)」と言われるもので、捕り手・雑兵などが着ています。牡丹や菊の花模様の着付けで、裾は短く両脇が割れているのですが、赤い鉢巻きと襷をし、手に花の枝か花篭を持っています。舞踊仕立ての立ち回りの場面でよく出てきます。「嫗山姥(こもちやまんば)」の中でも"荻野八重桐"(おぎのやえぎり、足柄山の金太郎のお母さんとされる)と捕り手との立ち回りシーンがありましたが、この捕り手が着ている衣装が「花四天」です。また、転じて捕り手や雑兵などの役柄そのものを「花四天」と言います。

上記の他にも、「寺小屋」や「弁天小僧」などで捕り手が着ている「黒四天(くろよてん)」、黒四天のなかでも少し格上で忍者などが着る馬簾の付いた「忍び四天」、「道成寺」では蛇を連想させる「鱗四天(うろこよてん)」、などなど沢山の種類があります。


 
   
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