かぶきのおはなし  
  81.茶番劇  
 
よく底の見えすいた下手な芝居や、馬鹿げた振る舞いのことを「茶番劇」などと言います。永田町では、衆議院の定数削減を巡って自民・自由・公明の3党の間でいつもの「茶番劇」が繰り広げられている、等というように使います。

この「茶番劇」という言葉は、やはり歌舞伎から出た言葉のようです。諸説あるようですが、最も分かり易いのが、江戸時代は役者の階級というものがうるさかった時代ですが、3階の大部屋俳優(階級の低い役者たちです)が、芝居興行中にお茶当番を勤めることになっていたそうです。そしてこの階級の低い役者(茶番)の人達が、千秋楽に芝居が跳ねたあと、今で言う打ち上げ会のようなものを始め、この打ち上げ会で各人の隠し芸などを披露し合ったというものです。

茶番達がするから「茶番劇」です。当然のことながら大名題の名優や花形役者の演技には到底及ばない稚拙な芝居となるのは、やむを得ないことでしょう。ですから「茶番劇」は、下手な芝居ということになる訳です。

余談ですが、この茶番に似て少し違うものに「茶挽き(ちゃひき)」という言葉があります。「茶挽き」というのは、番茶を茶臼で挽いて抹茶にすることですが、江戸時代の遊女屋では、客がなくて(人気がなくて指名が掛からないことです)暇な遊女の仕事がこの「茶挽き」でした。

 
 
人気ナンバー1の遊女のことを「御職(おしょく)」と呼ぶことは以前に書きましたが、それと逆に人気のない遊女のことを「お茶挽き」と言うのです。「お茶を挽く」というのは、売れっ子でない遊女を指していう言葉です。


茶番劇
 
   
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