かぶきのおはなし  
  70.三番叟  
 
「さんばそう」とお読み下さい。

この「三番叟」ですが、「三番叟物」として歌舞伎舞踊の1ジャンルを形成している舞踊(劇)で、それも大変にお目出度いものです。

もともとは、能の「翁(おきな)」、能狂言の「三番叟」にあるものを歌舞伎に取りいれた儀式舞踊で、江戸時代では顔見世興行や正月興行などに「寿式三番叟(ことぶきしきさんばそう)」として上演されたようです。

 
 
この「三番叟」の踊りを言葉で表現するのは、私の言語力では到底無理で、これはもう実際に芝居を見るか写真を見て頂くしかありません。
それでも敢えて言うならば、父尉(ちちのじょう)という"翁(おきな)"が、若衆役者の"千歳(せんざい)"を連れて舞い、この2人に烏帽子を被り、飄逸(ひょういつ)な格好をした"三番叟"が加わって滑稽味のある踊りを軽妙に踊ってみせるというただそれだけです。

三番叟
 
  中世の田楽能の系統に繋がるものだと思うのですが、この3人が、天下泰平・五穀豊穣(ついでに芝居繁盛)を祝って踊るのです。ただそれだけの踊りですが、古くて格式のあるものでもあり、役者は舞台に立つ前には必ず身を清めてからするのだそうです。

「寿式三番叟」が、歌舞伎でのオリジナルですが、儀式性が勝ちすぎていることから、その後江戸庶民の嗜好に合わせるかのように歌舞伎風にくだけた様々な「三番叟」が作られました。数えあげれば数えきれないほどですが、代表的なものをご紹介しますと、「舌出し三番叟」("三番叟"が踊りの途中で舌を出す)、「操三番叟(あやつりさんばそう)」(操り人形の格好で踊る)、「二人三番叟」("三番叟"が2人いる)などです。

 
   
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