かぶきのおはなし  
  44.間は魔  
 
舞踊や演劇などで、拍と拍、動作と動作、あるいはせりふとせりふなどのちょっとした時間的間隔のことを、「間(ま)」と言います。「間の取り方がうまい」などというふうに使いますが、要するに、間合い、呼吸、タイミングといった意味です。

専門家に言わしめると、歌舞伎狂言、とりわけ舞踊劇においては、この目に見えない微妙な「間」の取り方ひとつで、出来・不出来を左右してしまうほど大切なものだそうです。

そんなに大切なものであるにも拘わらず、なかなか手にとって教えることが出来ないものだそうで、まことにやっかいなものです。歌舞伎役者たちは、先輩や名人達の芸を見て、さらに自分なりに工夫・研究を重ねて、だんだんに会得していくものだそうです。
 
 

間は魔
この「間」の取り方が悪いと、舞台を壊してしまうのだそうです。テンポが速くなり過ぎたり、逆に冗長な感じになったり、あるいは共演の役者との呼吸が合わず、芝居がちぐはぐなものになったりします。こういうのを、「間抜け」と言うのだそうです。

「間は魔」。6世尾上菊五郎(1885−1949)の残した名言だそうです。
 
  また、歌舞伎の音楽やせりふ術などで、緩急・強弱・高低・伸縮などがはっきりしていて観客に心地よく聞こえることを「めりはり」が利いている、と言います。「めり」というのは、「緩み」(ゆるみ、滅る)のこと、「はり」というのは「張り」(強める)ことです。私たちの生活の中にも生きている言葉です。
 
   
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