かぶきのおはなし  
  43.歌舞伎十八番  
 
自分の得意芸のことを、「おはこ」と言うことがあります。忘年会などでよく「おはこの芸が出た----」などと耳にします。

この「おはこ」、箱に入れて大事に保存するという意からきているのだそうですが、漢字では「十八番(おはこ)」と書きます。なぜ、得意芸の「おはこ」が「十八番」なのか。実は、この言葉も歌舞伎に語源を発します。

 
 
江戸時代、荒事芸を創始した市川団十郎家(成田屋)は、歌舞伎役者の家系の中でも「宗家(そうけ)」として別格の扱いを受けてきましたが、その7世市川団十郎(1791−1859)が、初世以来受け継がれてきた市川家の得意芸を18だけ選び出し、これを「歌舞伎十八番」(家の芸)として定めたところから出た言葉なのです。
(市川家の権威づけの為に、制定したという説もあります。)

代々の団十郎によって、この「歌舞伎十八番」の演目は大切に受け継がれて来た訳ですが、このことから、世間一般にも得意芸のことを「十八番(おはこ)」というようになりました。
歌舞伎十八番:「鳴神」
 
  以下にその「歌舞伎十八番」の演目を、ご紹介しますが、このうち多くは初演当時の脚本はこのうち多くは初演当時の脚本は残っていないようで、2世尾上松緑(おのえしょうろく)(1913−1989)などによって復活の試みはなされて来ましたが、初演の頃とは脚本も相当変わっているのではないかと、勝手に想像しています。


<歌舞伎十八番>
「不破(ふわ)」、「鳴神(なるかみ)」、「暫(しばらく)」、「不動(ふどう)」、 「嫐(うわなり)」、「象引(ぞうひき)」、「勧進帳」、「助六(すけろく)」、 「外郎売(ういろううり)」、「矢の根」、「押戻(おしもどし)」、 「景清(かげきよ)」、「関羽(かんう)」、「七つ面(ななつめん)」、 「毛抜(けぬき)」、「解脱(げだつ)」、「蛇柳(じゃやなぎ)」、 「鎌髭(かまひげ)」、

なお、この後、他の役者の家でも成田屋を真似て、同様に「家の芸」を選定するという動きが盛んになりました。現在、有力な家系では例外なく「家の芸」を定めております。
 
   
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