かぶきのおはなし  
  34.浄瑠璃(じょうるり)  
 

浄瑠璃

文楽のことを人形浄瑠璃といいますが、この「浄瑠璃(じょうるり)」というのは、語り物のこと、あるいは三味線を伴奏音楽とする語り物という意味です。

人形は、当たり前のことですが人間ではないから喋りません。喋らないと、観客からは何がなんだか劇の筋書きが分かりません。それで「浄瑠璃」(=語り)をつけて、人形に代わって喋らせる、という訳です。

 
  さてこの「語り」ですが、古くは盲目の座頭(ざとう)が、琵琶を片手に諸国を行脚(あんぎゃ)して物語を聞かせたというのが、始まりだと言われています。平家物語に出てくるあの盲目の琵琶法師です。(ですから、中世の浄瑠璃は、伴奏は三味線ではなく、琵琶でした。)

そして最初に取り上げられた題材が、三河の国(いまの愛知県)矢矧(やはぎ)郡の長者の娘・浄瑠璃姫と牛若丸との恋物語であったところから、この「語り」のことを「浄瑠璃」と呼ぶようになったそうです。もともとは、お姫様の名前だったのです。

もう一つ、文楽とは切っても切れないものに「義太夫」、あるいは「義太夫節」というのがありますが、これはもともとは音曲(音楽)の一流派の名前でした。それがいつの間にか文楽専属の伴奏音楽のようになってしまったもので、いまでは文楽の「浄瑠璃」(語り)の部分と三味線(音楽)の部分を併せたものを「義太夫」と呼んでいるようです。

平たく言えば、文楽のBGMを担当するのが、「義太夫」だと思えばよいでしょう。そしてその中で、語りの部分を担当する者を「太夫(たゆう)」と呼びます。

「義太夫」という名は、これを創始した初世竹本義太夫(たけもとぎだゆう)(1651−1714)の名前に由来します。貞享元年(1684)大坂・道頓堀に「竹本座」を創立、作者に近松門左衛門(1653−1724)を得て、人形浄瑠璃の発展に大いに貢献した人物です。

以下に浄瑠璃の系統図を簡単にまとめました。浄瑠璃は「語り」なのか「音楽」なのか迷うところですが、まあ「音楽」付きの「語り」というところでしょう。

 
  <浄瑠璃の系統図>
1.義太夫節(竹本義太夫)

2.肥前節(江戸肥前掾)
---- 半太夫節(江戸半太夫)
---- 河東節(十寸見河東、ますみかとう)

3.一中節(都太夫一中)
---- 豊後節(宮古路豊後掾)
---- 常磐津節(常磐津文字太夫)
---- 富本節(富本豊前掾)
---- 清元節(清元延寿太夫)
---- 新内節(鶴賀新内)

---- 宮薗節(宮薗鸞鳳軒)

4.大薩摩節(大薩摩主膳太夫)

 
   
back おはなしメニュー next