かぶきのおはなし  
  30.差金(さしがね)  
 
「あいつは誰かの差金だ----」などと、よく言います。国語辞典をひくと「陰で人を操ること。入れ知恵」と出ています。

前項で、黒衣が「差金」の操作をする ---- 、と書きましたが、この「差金」という言葉、もともとは人形浄瑠璃からでた言葉のようです。人形の手を動かすために、人形使いの腕の中に差し入れておく「細い鉄棒」のことを指して呼んだ言葉です。


 
 
人形の手を人形使いが陰で(黒衣に身を包んで)操る、というのが人形浄瑠璃ですが、歌舞伎では、ちょうど釣竿のような竹(これが「差金」です)の竿先に小道具の動物などを付けて、黒衣(後見)が陰で操って動かします。
差金
 
  どんなものを付けて操るのかというと、蝶々とか鷹などの鳥です。あるいは、狐火(きつねび)だとか人魂(ひとだま)(こんなものは現代人なら信じないのでしょうが、昔は本当に自然界に存在するものと信じられていたのです)などです。

「あいつは誰かの差金だ」とういうところの「あいつ」とは蝶々や鷹、狐火、人魂のことで、これらは自分の意志で動いている訳ではなく、「誰か」、つまり黒衣に陰で(つまり「差金」で)操られて動いているだけだということです。
 
   
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