かぶきのおはなし  
  18.こんぴら歌舞伎  
 

四国は香川県仲多度郡琴平町に、現存する日本最古の芝居小屋があります。その名は、「金丸座(かなまるざ)」。俗称「こんぴら歌舞伎」です。
天保6年(1835)に建てられたそうですから、ざっと今から165年前の劇場です。このことから歌舞伎は、江戸や京・大坂だけでなく、地方都市にまで広く行われていたことが分かります。
こんぴら歌舞伎
 
 
私も数年前、金刀比羅八幡宮を訪れた際に、立ち寄ってみましたが、昔の芝居小屋はこんなものであったのか、と驚かされると同時に、当時の人達の様々な工夫に感心させられたものです。
屋根はちゃんとあるから安心ですが、電気はありません。照明は、蝋燭(ろうそく)の明かりと、明かり窓からとる自然の明かりだけが頼りです。もちろん、明かり窓の開閉は、すべて人力です。
回り舞台は、奈落の底で力自慢の男達が、力いっぱい仕掛けを押して廻します。
セリもすっぽんも、すべて人力で上下させますから、舞台裏の人達は大変です。まさに、縁の下の力持ちを地でいくところだと思いました。
劇場正面には、ちゃんと「櫓」が掲げられております。入り口は、鼠木戸。背を屈めてはいります。レトロ趣味を持ち出すまでもなく、訪れた人を江戸時代の芝居小屋に、タイムスリップさせてくれるのです。

この「金丸座」。昭和45年に重要文化財の指定を受けたあと、修復工事を施し、昭和60年以降毎年、東京から大歌舞伎の役者が四国まで出張し、歌舞伎公演を行っています。私は、まだ見たことがありませんが、昔の芝居小屋の雰囲気が漂うこの「金丸座」で、是非一度芝居見物をしたいものと願っております。

 
   
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