かぶきのおはなし  
  11.歌舞伎の舞台  
 

歌舞伎の舞台は、相当に広いです。歌舞伎座などは、奥行き20.6m、間口が27.3mというから、相当な広さです。
もっとも、劇場によって広さは違うようで、歌舞伎座や国立劇場で歌舞伎を見たあと、浅草公会堂や新橋演舞場で見ると、がっかりするほど狭い劇場だなあと、私などは嫌になってしまいます。大阪の新歌舞伎座、京都の南座なども歌舞伎座と比べれば、どれも狭く感じます。
歌舞伎の舞台
 
 

舞台の広さは、劇場によって違いますが、その機構はほぼ同じです。客席から舞台に向かって、右側を「上手(かみて)」、左側を「下手(しもて)」と言います。ですから芝居を見ていて、右側に居る人物の方が、左側に居る人物より身分が高いか、年配だと考えてほぼ間違いはないでしょう。
上手の出入り口の上部、ちょうど中二階のようなところに「御簾(みす)」と呼ばれる義太夫を語る(演奏する)場所が作ってあります。(義太夫については項をあらためて説明します。)義太夫はまた「出語り(でがたり)」といって、上手(かみて)板壁内からちょうど回り舞台のように、「床(ゆか)」に乗って出て、客席から見えるところで語ることもあります。

舞台下手(しもて)には、「黒御簾(くろみす)」があります。客席から中は覗(のぞ)くことは出来ないのですが、ここには「下座(げざ)音楽」を担当する人達がいて、舞台の場面 ・進行に合わせて効果音(楽)を奏(かな)でるのです。雨や雪が降ってきたときの効果 音や、賑(にぎ)やかな様子、深刻な様子などを、音で表現して客席に場面の理解を容易にします。一種のBGMだと思って良いでしょう。
この「下座音楽」ですが、唄と鳴物(なりもの)、三味線で構成されています。 鳴物には、大太鼓、締め太鼓、鼓、太鼓、笛などがあります。物事を大袈裟(おおげさ)に宣伝することや、賑(にぎ)やかにはやし立てることを「鳴物入り」などと言いますが、この「鳴物」は歌舞伎の「下座音楽」の「鳴物」です。

舞台中央、ここで日本の歌舞伎が世界に先駆けて開発した、舞台技術があります。それは何かと言うと「回り舞台」です。場面 の転換を瞬時に行うことの出来るこの「回り舞台」の発明は、まさにアカデミー技術賞もので、世界に先駆けて、 宝暦8年(1758)大坂・角の芝居で初めて使用されました。ちょうど、駒の廻るのを見て思い付いたのだといわれています。初世並木正三(なみきしょうぞう)(1730−1773)の業績だということです。

また、舞台中央には、「セリ」と呼ばれる機構がいくつかあります。要するに、客席から見れば、舞台の下からエレベーターのように上下する仕組みになっている訳で、大道具・小道具あるいは人物などの昇降装置です。「セリ」に乗って役者が舞台に上がってくるから「セリ上がる」なのです。
 
   
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