かぶきのおはなし  
  2.芝居  
 

歌舞伎の出し物(演目)のことを、正しくは「狂言」、あるいは能狂言と区別 する意味で「歌舞伎狂言」と言います。
この「狂言」という言葉は、幕府が荒唐無稽(こうとうむけい)なものだけを演じればよいとお布令を出した時に、「狂言綺語(きょうげんきぎょ)」と表現したからだと言われております。
でも普通の人は、「狂言を見に行く」とは言いません。まあ、「歌舞伎を見に行く」とか、もっとくだけて「芝居を見に行く」と言います。
芝居
 
  歌舞伎の始まりは、慶長8年(1603)頃、京都の北野神社の境内で"出雲のお国"が踊った"ややこ踊り"だというのが定説ですが、初期の歌舞伎(歌舞伎と言えるようなものでは、なかったのですが)は、社寺の境内などで興行が行われるというのが一般 的で、観客は芝生の上に座って(居て)これを見るというのが、普通の姿だったようです。

勿論、舞台や花道や引幕(ひきまく)などはなく、ましてや舞台や客席を覆(おお)う屋根などはあろう筈はなく、今日の歌舞伎座や国立劇場などで歌舞伎を見る人からは、想像も出来ない世界でした。大雨が降れば休演せざるを得ないというのが実状だったのです。
芝生の上に座って(居て)見ることから、「芝居」という言葉は、当初、見物席を意味する言葉であったようですが、のちに転じて、劇場・演技・演劇などを指す言葉になりました。

ついでながら、のちに「桟敷(さじき)」という見物席が設けられましたが、これは貴賓席のことで、一般 大衆は舞台と桟敷の間の土間、つまり「芝居」で歌舞伎を楽しんだのです。現代風に言うなら、「桟敷」は一等席、「芝居」は二等席といったところでしょうか。
 
   
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